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偏ったコーヒー

Posted: 2022.04.12 Category: ブログ Comment: (0)

偏ったコーヒーイメージ1

店主です。


多くの人びとにゆるい拍手で迎えられ、設えの良い集音装置を手のひらに握り、座ってくちもとにそえたままボソボソ声でなにやら好い気に発話を繰り返していた場面があります。それはたしか、ついこないだの出来事です。このことについては、どこかでたしか、なにかを書きました。訥々と(文字通り訥々と)、ただコーヒーについて話すというよりは、いくらか「偏ったコーヒー」について触れなければならない場面があったというような記憶です。たしか、そういう瞬間の訪れがあったと記憶しています。ただし問題の場面は「瞬き」(デリダ)をしていたら終わっていました。


進行中の時間の中で、わたしは(いつものごとく)ほとんど眠っていたのかもしれないと思いましたが、途中ソリッドなマイクの触感を手にしたままでも何かの会話は続いていたようで、汗ばんだ手のひらとある情景に包まれ、起きたあとのように、あるいは構図のようにあたまに浮かびつつあった何かを捨てながら、これはいつかあったのと同じような場面だ、というふうに考えていました。その場面は正直、思い出せることと思い出せないことがあるのですが、わたしはたしか記憶の中の自分と同じように、「中庸」ということばについての思案が巡るのを感じました。そして、それについて何か書いたことがあったとも思ったのです。どうしてそんなことを思ったのかはわかりません。コーヒーについて、あるいはコーヒーに関して、あまりに構図めいた発言をした自身の平板さに動揺していたのかもしれません。しかし、「中庸」というのはわたしがわたしの想う「コーヒー」に向けたなにかの手がかり、ゆいいつの手がかりであるという気がするのに、時折(しょっちゅう)忘れてしまうものです。それは、困ったものです。同時に中庸というのは、しょっちゅう覚えていたら、ある意味それは間違いでもあるような気がするものです。


わたしは「中庸」というまったく掴むことのできない感覚について、子思の発言集成であると勘案されているある書物から来るイメージというよりも、むしろ『論語』の中で、孔子が数度呟いている場面のニュアンスのほうに何かがあらわれているものについて、ふたたび考えをめぐらせていました。中庸というものの意味について、とても説明のつかないことを説明しようとする(無茶をする)のであれば、それは、「偏った」という意味を反対にしてしか取り出せない、なにかの概念ではないかと思います。つまり、偏ったものが何もないというような概念です。中庸というものを「中程」であると捉える概念があります。しかし、フィフティフィフティというのは、すでに「定量的」な概念に偏っています。あるいは、「数字的」な概念に偏っています。ですので、それは間違いです。ここまでくると、意味を述語的に取り出すこともほとんど不可能に思えます。わたしは坂口安吾が好きなのですが、彼がある場所で「行雲流水の如く」と言ったことばは、前後の文脈も含めて何か「中庸」ということばに似ているように感じます。


しかし、すべておいて何にも偏らないというのは、果たして本当に可能なのでしょうか。あるところまでは可能ですが、あるところからは不可能であるように思えます。だいたいは続かないからです。そして、偏らないことをもし本当に突き詰めると、「偏らないという状態」に偏っている、そういう「偏り」すらもスポイルされるはずです。つまり、「無根拠の根拠」(蓮實重彦)というものとの遭遇です。わたしは、こういう何かの裂け目からこぼれるものに、見間違いでなければかろうじて「意志」だとか「意味」だとかを見ます。そして、見間違いでなければ「表現」というものを見ます。「倫理」というものも、おそらくそこから見えるのだと思います。そういう偏りならば、何か信じられるかもしれません。あまり自分っぽい感じのことを言っていないことは百も承知ですが、そういう偏りならば、何か信じられるかもしれません。


こういうことが書きたくて書きはじめたわけではなかったのに、なんだか全然違うところにたどり着いてしまいました。これはわたしの書きたかったことではありません。本当に書きたかったこと(そんなものがあるかは謎ですが)は、いつか機会があれば書きたいと思います。


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