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物事が形になるまで

Posted: 2025.03.22 Category: ブログ

物事が形になるまでイメージ1

さきごろ東京に向かう用事のことを思い出していた時、ちょうど数年前に同じ時期に同じように東京に向かい、ある男性と会っていたことを(これというわけもなかったのですが)なんとなく思い出しました。その男性は、かつてわたしが仕事で知り合いになった女性(今は海外で起業をしたと聞いている自分よりずいぶん明敏な女性)から紹介された男性で、いまの自分の手がけている仕事にとっても、いくらか関わりのある人でした。「少し目をかけてもらえると」、というと大袈裟なものですが、それに似た言伝を若い彼女から受け取り、見知らぬ土地(その一区画だけを言えばまさにそういう土地でした)で、見知らぬ若い男性と会うことになったのです。

そんなわけで眠りの浅かった宿泊先をあとにし、電車に揺られながら時折取り出すデバイスに目を通しているうちにたどり着いた建物の前で、自分は大勢の人の様子に圧倒されるわけです。大手コーヒーチェーンが作り上げたその場所は、コーヒーロースターとコーヒー生豆と焙煎豆が、至る所から視界に入る不思議な光景と呼べるもので----それにガラス向こうの様子を伺いつつ、あとどれくらいで中に着座できるかを確かめながら、片手に収まる電子機器に触れる若い男女が大人数たむろしているのです。日差しの強い日でした。着信ののちにやって来た目的の男性とは、着座の待ち時間の目安を告げられたあとで顔を見合わせて苦笑し、雑踏をうろうろすることになりました。

行方定かならない踵をめぐらせる一組は、春というには汗ばみそうな陽光に目をつぶしたまま、人通りの多い道から路地に入ったところで足を止めました。そこにあったのは、こじんまりとした「個人経営店」のカフェです。開き扉を開け放つと、香りづけされた紅茶の匂いが広がる幅のほそいカウンターと先会計のレジがあって、ドリンク注文ののちに(自分は時計を見た後にアイスティーを、彼はホットのカフェオレを頼みました)、長めの息を吐いてつきます。座れたことに、とてもほっとしました。

店内には会話をすれば消えてしまうような食器とカトラリーのぶつかる硬い音が聞こえていて、ドリンクが届くまでの短い時間が過ぎていきます。出来事に対する時間の流れ方はひどくあいまいで、わたしは時空をこえたどこかに紛れ込んだしまった気がしました。談笑のやりとりはおそらく静穏さ以外のものを周囲にあらわしていなく、期待とともに話しはじめた肝心の会話は、広がりを失ったままゆっくりとしぼんでいき、いつの間にか、かちゃかちゃいうだけの音の中に吸い込まれてしまいました。----深謀遠慮、とあたまの中でつぶやいたわたしは、なんということもなく窓外に向けて視線を投げたまま、どういう順番で噛み砕けばこの物事は形になるだろうかと思案しました。

----もう岐阜に帰られるんですか、と声をかけられた自分はいくつかの理由を話しながら外に出ます。それから挙手で別離し、なんということもなく路傍に向けて視線を投げたまま、ふたたび思いつめたような気持ちでどう噛み砕けばこの物事は形になるだろうかと思案します。新幹線に乗った後も、しばらくそのことを考えていました。
 
『私の結論は、言い訳を熱弁している暇があったら、もっと素早く行動に移せば良い。いつも考えているばかりよりも、何か実際にやってみたらどうか。貧乏マインドの人は、ある共通点により人生に失敗します。ずっと待ってるだけで、自ら何も行動しないからです』(ジャック・マー)
 
当時自分はそんなことばを思い出して新幹線に揺られていたのですが、それから数年後もあのときとほとんど変わらないまま自分は、同じ方向の新幹線に揺られているわけです。
深謀遠慮? 
東京から帰って一番最初の仕事は、カフェ開業希望者向けのセミナーでした。

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