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運について

Posted: 2025.03.14 Category: ブログ

運についてイメージ1

それは先般おこなわれたトークイベントで、Cafe旅人の木の店主からもかるく指摘があったことかもしれないけれど、自分は「経営者の書いた本」を読むのが個人的に嫌いではなくて、それは自分自身がまさか(たとえその役回りがどれだけ細々としたものだったとしても)将来的にその役割を担うことになるとはつゆほども思っていなかったような低賃金労働者のころからあまり変わっていないことで、当時(それはいまからもう20年くらいは前のこととも思うのですが)、自分はこの国の首都のあたりで、なんというかよくわからない感じでブラブラしていました。なんだかよくわからないままブラブラしていましたが、なにをしていたのかといえばそれ以上安かったらもはや何を受け取っているといえるのかというくらいの労働量と受領する賃金の量のひどい落差にあえぎながら、(もちろんそういうものばかりを読んでいたわけではないとしても)もっぱら「経営者の書いた本」を読んでいたのです。将来の展望などもなにもないまま、当時一緒に暮らしていた相手が甲斐性のなさに愛想をつかして出て行ってしまったときにも、何かの「経営者の本」を読んでいたような気がします。

ともかくそんなわけで、自分は自分の事業の参考にしているわけでもない、けれども読んでいるとめっぽう面白いある有名経営者の書いた『運』という(ものすごい)タイトルの本に、またぞろ目を通していました。そして読んでいるなかで、内容とはべつに気になった箇所を見つけたのです。パン・パシフィック・インターナショナル・ホールディングスについては、先日読んだ種類の違う本のなかで、似た業種としてニューヨークのジャズクラブから名前を取ったある会社の業績がこれといって伸びなくなったことのとなりに置ける事実のなにかが書いてあった気がするのですが、それはサブカルチャーというものがもはやこの世界のどこにも存在していないという、とても面白い着眼点からくるものでした。本当はそのことについても深く掘り下げたかったのですが、自分が気になったのはPPIHが実業者の知恵の捻り方や腕の見せ所で買収した、あるチェーンストアのことなのです。そのチェーンストアは、結果的に先述した「遊べる本屋」とは違う形で、サブカル的なありようからはじまったその会社の企業文化を大幅にアップデートしたのですが、自分が想起したのはかつて(かろうじて)師事したコーヒー屋の頭領が、そのチェーンストアと組んで日本を代表する高品質なコーヒーチェーンを作る寸前まで行っていた、という話でした。

それは「運」なのでしょうか? そのお店の代表は、結果的にその道を選ばなかったことを誇りにされていて、黙って聞いているわれわれのような瑣末極まりないコーヒー屋の店主に向かって、「他店舗展開はするなよ」という高説をくちにされていた気がします。いまから思い返してみれば、こういう種類の話の奥行きのなさには、あらためて沈黙する以外の感じがありません。その理由も、自分ではよくわかりません。結局は「運」だと思っているからでしょうか? ともあれ実際に事業体として立ち行かなくなった、スズメ目タイヨウチョウ科の小鳥をデザインしたあのロゴのスーパーマーケットに、そのコーヒー屋がチェーンとして入っていたとしたら、(その後の経緯はどうあれ)、最終的はおそらくPPIHがなんとかしていたと思うのは自分だけでしょうか。他力について思うことはいくらでもありますが、「一店舗の銘店」を言い続けているうちは(少なくともそれを座ったまま黙って聞いている人がいるうちは)アクチュアルだったそのお店が、いつのまにかこの国の首都のある場所をブラブラすることばの語源の曲解に関わるお店のイメージのほうへ、知らず知らずのうちに歩んで見えるとしたらどうでしょうか。自分はよくわからないまま、そんなとりとめのないことをとりとめもなく考えていました。

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