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コーヒーと「ある」時間

Posted: 2021.04.19 Category: ブログ Comment: (0)

コーヒーと「ある」時間イメージ1

店主です。


『VIVO』誌上で、3年ほど、コーヒーについての連載をしていました。(ブログなどをとくに読まれていたわけでもなく)わたしを書き手として見つけていただいた、飯尾編集長には感謝しかありません。コラムのタイトルは『コーヒーのある時間』でした。


タイトルの意味は、生活の中、コーヒーが傍にある時間、という風に思われていた方がみえるかもしれません。事実わたしも、冒頭でそのような書き方をしたと記憶しています。しかし、コーヒーの「ある」時間、という語における「ある」は、exsist、have、be、という意味での「ある」ではなく、本当は「one of (time)」、「a certain (time)」、つまりコーヒーをめぐる「ある特定の時間」、という意です。(もちろん、わかる人にはゴダールだとすぐわかる引用だったかもしれませんが)。


ものを書くときには、いつも何度も手が止まりました。それはしかし、いまにはじまったことではありません。わたしの書いているものが最初に活字になったのは、(見つけられる人がいるとも思いませんし、わたし自身の手元にももはやありませんが)リットーミュージック社の出していた、某紙のロックミュージックの評論でしたが、それからしばらくずっと何も書いていませんでした。正確に言えば、書いているものが活字になることはありませんでした。そもそも、音楽について何かを書くのは、とても不思議な感じがしたのです。わたしは、文章の中には、音楽もあるし、映像もある。感覚もあるし、すべてがあると思っていたのです。しかし、言葉が「現実の似姿」だと思っていたわたしは、それがそうではない、言葉は言葉だと気づいたときから、ほとんど何も書けなくなってしまいました。二十代の半ばくらいだったと思います。


何か書こうかな、という気分になったのは、コーヒーの仕事に関わりはじめてからでした。事実、わたしの気分とは無縁に、田口氏や石脇氏の文章は紡がれていました。そういうものに、何か励まされたというところはあったかもしれません。しかし、一般的に、コーヒーについて書かれているものは、たいていろくでもないものばかりでした。というか、『珈琲大全』や『コーヒー「こつ」の科学』、『私的珈琲論序説』といった書き物のあとに、人はいったい何についてコーヒーを語れば良いのでしょうか?


そこでわたしが見つけた「ある」(「one of (time)」、「a certain (time)」)の感覚(間隔)は、自分がかろうじて何か書くことに向かうためのコンパスでした。もちろん、ゴダール的な(意味解釈の)浮遊感が、感覚的にわたしを軽くさせたところもあったと思います。コーヒーはそれ自体が絶対的なものとして存在しているということはなく、「ある」コーヒー、「ある」形でのコーヒーが「ある」、それが「ある」時間としていま「ある」だけです。わたしはそれを直接言うことが出来ないし、記述学的な正確さも目指していませんでした。成果はともかく、試みは、「事物の関係性」を浮かび上がらせようとしたところにありました。


現在といわれるところの「ある時間」において、紙媒体を主業にした版の事業には、カタストロフィーという以外の状態がよく見えません。もちろん、『VIVO』さんも例外ではありませんでした。わたしの連載ではなく、版そのものが終わりなのです。わたしは無力さを噛み締めていました。ちょうど半年前、自分の仕事がコーヒーの仕事から、何か書くことに変わってきている、というような(実に曖昧かつ呑気な)ことを書きました。自己予言にはいつも非=預言的なものが含まれるものです。わたしはそのあとはじまった連載と、今回の連載、そして新聞の連載がすべて、同時期になくなってしまったのです。そして、コーヒーの仕事は、さらに忙しくなりました。


もちろん、この状態もいつか反転すると思います。いずれにしても、それを決めるのはわたしであって、わたしでありません。

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