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コーヒーのはずれ

Posted: 2020.12.13 Category: ブログ Comment: (0)

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店主です。


わたしはわたしの人生の中で、「因縁」(この言葉についてはいつか書きたいことがあるので書きます)があるというのを感じた事物は、コーヒーとロックミュージック(音楽)だけでした。コーヒーとロックミュージック。コーヒーはひとまず置いておくとして、ロックミュージックは、ある時期においてわたしの人生のすべてでした。それがどのように相互関係があるかはわからないにしても、わたしがいま思うのは、コーヒーもロックミュージックも、「ダメであることの中に何かの正解がある」という数少ない物事だというような感想です。文字起こしするとたんにうそ寒いこのことばは、本当に言い表すことが難しいような何かです。ダメであることに正解がある。それは、しかしこういう言葉の方がよくあらわしているのかもしれません。


『プロフェッショナルは絶対に必要だし、誰にでもなれると言うほど簡単なものでもない。しかし、プロフェッショナルは、それが有効に機能した場合、共同体を安定させ変容の可能性を抑圧すると言う限界を持っている。僕が最終的にプロフェッショナルであってはならないと思うのは、そのためです』(蓮實重彦)


わたしが「ダメであること」というのは、どうもこの「プロフェッショナルであってはならない」という言葉のニュアンスに近いような気がするのです。(実際にアマチュア的であるかどうかとは関係がない、というか微妙に違う問題ではありますが)。コーヒーとロックミュージックには、たしかにそういうものをめぐる、何かがあります。そして、そればかりではありません。わたしは「ある人物」が、コーヒーとロックミュージックに関してあまりクレバーではないものの言い方をされているのを知っているので、ここで書いていることもかなり反照的な言い方になることを覚悟していますが、歴史的事実として20世紀最後のユースカルチャーを見たときに、まったく無関係であるふたつのコンテンツは、たしかに何か、関連性があるのです。たったひとつのアメリカ北西部の街から、20世紀最後のユースカルチャーが出ている。グランジとエスプレッソ。固有名詞的な言い方をすれば、ニルヴァーナとスターバックスコーヒー、ともに母体は、シアトルという街です。


20世紀後半のアメリカ西海岸では、沿岸部のマーケットプレイスがコスモポリタン的な空気を醸していました。これは、わたしも実際に訪れて名残りのようなものをいくつかのエピソードとともに確かめていたものです。ブルース・パビットとジョナサン・ポーンマンのサブポップ・レーベル(音楽)があらわしていたのは、その当時の空気感です。ヨーロッパにルーツを持つ焙煎人(というか焙煎嗜好者)が、その後のチェーンストアのルーツとして買収される経営的に非効率な自家焙煎珈琲豆売店に直接的な影響を与える程度には、当地において仮初のコスモポリタニズムがおそらく熟していました。わたしは、アメリカ西海岸をまわったとき、焙煎をしている人たちが皆チャド・クルーガーのような格好をしていたのをよく覚えています。長髪にくたびれたダメージジーンズ、ざっくりしたネルシャツや古着のTシャツ。言うまでもなく、それはカート・コバーンの亡霊です。


彼らは、ロックがもう出来ないから、コーヒーをやったのだと言っていました。スチューデントモデルのフェンダーギターを持って汚いディストーションを踏んでも、もう何も鳴らないとわかっていたから、焙煎機を触ったのです。そして、それは同じシアトルから出ているあのコーヒーなら何かの形で超えられるという、彼ら自身の無意識だったのかもしれません。


コーヒーの歴史だけ言えば、勝ち負けなく、意味だけがズレました。わたしはコーヒーの中にあるロックミュージック的な物事の名残りを、たしかに、たまに感じます。それは「有効に機能した場合、共同体を安定させ変容の可能性を抑圧すると言う限界を持っている」何かをつねに意識するということでもあり、また、たんにコンテンツとしてのそれに限界の物音を確かめながら、かつ愚直に耳を澄まし続けるというようなことでもあります。


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