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2023年に読んだ本

Posted: 2023.12.07 Category: ブログ

店主です。

年の暮れ近くに自分より目上の事業経営者ふたりほどに、「きみは面白い経営の仕方をしてると思うのだけど、どこでなにを学んでいるの」といわれました。こういうことをいわれたのは、はじめてではなかったと思います。というか、そもそも自分ではあまり面白いと思っていないところがあるので、これから書こうと思っていることもはじまりから間違えているかもしれません。自分なりの前提として、自身が学んだことを人に伝えるというのは(やるやらないは別にして)基礎的に好ましくない側面があると思っていて、とくにそれはすでに自分で事業をしている人にとっては闇雲なものになってしまうと思い、「結局、本を紹介するとかか。そういうことになるんだろうか」と考え、意気揚々と経営についての本をまとめていたのです。しかし、その紹介の仕方を考えてあたまをひねっているうちに、昔ある人から言われた「指南は必要のない人には必要がないし、必要のある人にも結局必要がない」ということばを思い出してすっかり意気消沈してしまい、取りかかっていた仕事をほとんどやめてしまいました。

そんな感じの気分のまま年をこそうとしていたころ、年末の手前に、「カフェふくろう」(カフェ・アダチ店主がもうひとつ経営しているカフェ)で「やまいもブックス」さんからおすすめの本を手渡されて、その紹介の仕方があまりにも気持ちの良いものだったので、「こういう感じならなにかできるのかな」と思ったのが、一連の出来事にたいするやり直しのきっかけでした。するとそれに重なるタイミングで「今年読んだ本」というふうに、これまたある人がさらっとブックリストを紹介しているのを見たのです。それがまた気持ち良かったので、「そうか。何の役に立つとかではなく、経営の本であるかどうかとか、今年発売された本にこだわるとかでもなく、2023年を振り返ったときにわりとよく読んでいて、なんとなく心に残った10冊の本をあげることで、成仏しなさそうな冒頭の状態をやり過ごそう」と思ってから、ここにいたるまでは早かったです。しかも、そこに経営の本がまったくはさまれないということも想像できなかったのが、また良い感じに思えたのでした。

というわけで、誰にとってどんな役に立つかを無視したところに立脚した内容ですし、今年っきりで来年以降はたぶんやらないと思いますが、店主が2023年に読んだ本であまり考え過ぎることなく思い出したものを、思い出した順にここに書いてみます。

※繰り返しますが、2023年に発売された本、ではないです。再読もあるし、2023年に発売された本も何冊かは含まれているので、本当にいい加減なものです。

 

【店主が2023年に読んだいくつかの本】

1.『読むことのアレゴリー』
ポール・ド・マン


自分は物事からなにかを読み取ることがあまり得意なタイプの人間ではないので、「読む」ことに優れた人の書いた本は、だいたい尊敬しながら読んでいます。ポール・ド・マンさんは文学的なテクストを読むのに卓越した人ですが、読み方が少し独特で、面白いです。「読む」というのが、結局は読み手の創意や寓意に近づいていくというのが----彼の書いたものというよりも----書き方そのものにあらわれているのが面白いです。個人的な話になりますが、彼が一番問題的だと思っている「ルソー」について書いてあるところは、まだまだ「寓意的」に読めていません。たぶん、一生かけてゆるりと読むと思います。

 

2.『差異と反復』
ジル・ドゥルーズ



2023年の年明けごろに読んだ記憶です。(個人の感想ですが)通読には不向きかもしれないですが、シェイクスピアを読むときのように、ワンセンテンスの暴力のようなものを探すとこれ以上ないくらい楽しい本です。あと、ドゥルーズが過去の思索の偉人の中で一番似ているのは(おそらくたぶん)スピノザだと思います。。

 

3.『直感と論理をつなぐ思考法』
佐宗邦威


あまり新刊めいた本を読まない店主ですが、これはとても面白かったです。ハウツー本のように読めない箇所がかえって気持ちが良く、そういう印象を持つ本は(個人的には)、とても貴重です。レゴがやりたくなって、子供たちにもいくつか買いました。

 

4.『企業参謀』
大前研一


経営コンサルタントという人に話を聞くよりも、この本を自分で読んで色々と考えた方が(頑迷の度合はともかく)、ちからはつくと思います。古いのに新しいし、たぶん100年後にも意味が変わらない本。

 

5.『出アフリカ記』
クリストファー・ストリンガー


自然人類学の中では、ほとんど小説家が書いたように読まれている気がする本。コーヒーとアフリカについて思いを馳せる人たちが、学術の手前でどこまでこの本を読めているのかと思うといくらか疑問に思うことがあるし、誰かにじっくりと話を聞いてみたい(気がする)本です。
※あくまで気がするだけです。

 

6.『ホモデウス』
ユヴァル・ノア・ハラリ


「テクノロジーとサピエンスの未来」、という副題は、なにか困ったものを自分に思い出させるものです。。(とくに、テクノロジーということばは)。切り口が鋭いのと、文章が良いと思いました。

 

7.『安売り王一代』
安田隆男



経営者の書いた本では、(とくに今年出たものでは)ジャパネットたかたの創業者のものが素晴らしかったし、ワークマンの専務の書いた本も並外れて面白かったのですが、個人的には少しだけ古いこの本が印象的でした。ジム・コリンズの引用から来る「AND」と「OR」の考え方というのは、業種とか業績とかを問わずによく見ないといけない、経営の要諦だと思います。

 

8.『ケインとアベル』
ジェフリー・アーチャー


小説で、たまたま手に取りました。著者のことはあまり知らなかったのですが、滅法面白かったです。20世紀に19世紀のロシア作家が生きていたら、カフカとかでなくこういうものを目指していたのかな、と思いました。

 

9.『テニスボーイの憂鬱』
村上龍


初秋の京都のたまたま入ったお蕎麦屋さんでKindleの村上さんの新刊を読んでいたとき、顔をあげたら本人のサインがあって笑ってしまったことがありました。有名なお蕎麦屋さんだったようです。そこから何冊か一気に読み返しましたが、『映画小説集』をのぞくとやはりこの本が一番面白かったです。(登場人物の感情とは関係なく)村上さんがなににこんなに怒っているのかがよくわからなかったのですが、あるときふっとリアリズムという形式に怒っているのだと思ってから、面白さの種類が少し変わりました。

 

10.『デッドエンドの思い出』
よしもとばなな



「デッドエンド」というのが2023年の個人的なキーワードだったのかなぁというのが、やまいもブックスさんにこの本を手渡されてから気付いた事でした。著者自身が最高傑作を公言しているので彼女の著作の中でも抜群に面白いに決まっていますが、この連作短編の中でもとくに四作目のラストが、読後しばらくぼおっとなるような感じがありました。いままで読んだどの本にも書いてなかったなにかがあったのでした。

 

以上、2023年という区切り方にも意味があるのかどうかも不明、このようなブックリストに何の意味があるのかはよくわからないのですが、そもそもそういうものを忘れてからすらすらと進んだ内容のものでしたし、挙げた本はどれも素晴らしい(と思う)ので、年末年始に意外とやる事がなくて暇という方は少しだけ気にしてもらったりだとか、この著者だったらこっちの方が面白いだろうよ、このジャンルの著作ならこっちの本の方がいいに決まってるだろ、などとつぶやいたりしながら、面白がっていただけたら幸いです。

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